トピックス

第2回/ルネッサンス家具について

ルネッサンス家具とは、15世紀後半から17世紀に至るイタリアを中心にした家具様式です。
ルネッサンスとは言わずもがなですが、文芸復興です。(訳として異説もありますが…)
暗黒の時代が続くヨーロッパ世界の文化は東ローマ帝国の滅亡(コンスタンチノープルの陥落)により、劇的な変化が生じます。
ギリシャ文明の文物の宝庫であったアレキサンドリア図書館はローマのキリスト教化で貴重な文物は大半が散逸します。7世紀のアラブ人の侵入により破壊され、ギリシャ文明の真髄はアラブ世界へ移行し、アラビア語で編纂され、世界の中心はイスラムになります。
北イタリアや地中海貿易で栄えていたトスカーナ地方へ、東ローマ帝国滅亡に伴い多数の知識人が亡命してきます。彼らはたくさんのヨーロッパでは忘れられた古代ギリシャ・ローマの文物と知識を携えてきました。ヨーロッパ人が1,000年ぶりにアリストテレスの名前を耳にするのです。

また、当時のイタリアは文化的にはヨーロッパの中心地であり、古代ローマの遺跡も多く、多数のパトロン(メディチ家等)が存在しました。
当時の非科学的・非理性的な思考(占星術・魔術等)が当たり前であったのが、自分達の祖先が素晴らしい文明を持っていたことに気付くのです。ここにルネッサンスの運動が起こり、ヨーロッパが再生するとともに西ヨーロッパの進路が決まるのです。
当然、ルネッサンス様式はアルプスを越えて波及していきます。しかし、ゴシック様式が定着していた北ヨーロッパでは初期は表層的にしか普及しませんでした。だから国によって少しずつ異なった特徴があります。

【 イタリア 】
ルネッサンス発祥の地イタリアの家具は経済的成功を収めた新しい支配階級の地位の高さと権威の表現が意匠の目的です。
その代表が収納家具のカッソーネ(CASSONE)(図-1)です。
華美な彫刻や象嵌が施された。ギリシャ神話や獣やアカンサス(図-2)(葉の飾り)が題材となりました。
木材は今までの堅いオークからウォールナッツが主流となっていきます。
又、イスはサボナローラ(図-3)で後のXチェアの原型となるものです。
長イスはカサパンカ(図-4)です。
食堂にはクレデンツア(図-5)といわれる食器棚が置かれました。デーブルはローマ時代の模倣で脚部に華美な彫刻を施しています。
【 フランス 】
15世紀末になるとルネッサンス様式はフランスへ伝播します。
フランスの特徴はキャビネットの側面をピラスター(図-6)と呼ばれる飾り柱がついています。柱間は円、ひし形、ドルフィン(図-7)、グリフィン(図-8)等の神話が怪獣がレリーフで飾られています。
イスはカクトワール(図-9)の様にイスらしくなってきます。
テーブルはより実用的に軽量になりますが飾りつけは華美なものです(図-10)。
16世紀後半になると中産階級が力を持ってきたことが特徴となります。
家具はより普及していきます。
【 イギリス 】
イギリスにルネッサンス様式が定着するのは遅くなり、16世紀後半になります。
ゴシックと混同して発展します。エリザベス1世様式となり、カップボード(飾り棚)が発案されます。
彫刻はロマインワーク(図-11)(肖像画の彫刻)が特徴的である。イスは(図-12)のように挽き物を使い頑丈である。
テーブルはイスの構造と基本的に同じものが多い。材はオークが主流です。
イギリスは今後も大陸の影響を受けつつ、独自の発展を遂げていきます。

No.1 ゴシック家具についてNo.2 ルネッサンス